私は「VDC」「VHT」「KXI」「VYM」「HDV」といった生活必需品、ヘルスケア、高配当ETFを一般NISAで運用している。近年、成長著しくブームとなっている「GAFAM」とか「FANG」とかナスダック系の銘柄には目もくれずにここ数年過ごしている。
私はジェレミー・シーゲル教授が書いた「株式投資の未来」(通称 赤本)の影響を多分に受けており、この銘柄配分はその表れだと思う。
シーゲル教授の「株式投資の未来」
第一部「成長の罠」を暴く
第一章 成長の罠
第二章 創造的な破壊か、創造の破壊か?
第三章 時に裏打ちされた価値 ー黄金銘柄を探してー
第四章 成長すなわちリターンにあらず ー成長セクターに潜む罠ー
私がなぜ上記のETFを選択し投資しているかのこの本に全ての答えがある。
第一部ではいわゆる成長セクターに対して懐疑的な見解が記述されていく。題名の「成長の罠」というネーミングは読者の興味を惹きつけるには十分なパワーワードだ。
成長の罠
「成長の罠」の導入として1950年から2003年の期間の「IBM」と「スタンダードオイル」の2つの銘柄の比較から入る。主要な株価指標で「1株当たりの売上高」「1株あたり配当」「1株あたり利益」「セクター成長率」は共にIBMに優位な数字であるにもかかわらず1950年から2003年までの年率リターンを計算するとスタンダードオイルに軍配が上がる。数字としては
スタンダードオイル 年率 14.42%
IBM 年率 13.83%
となるようだ。
率で出されてもわかりづらいということで、50年前に共に1000ドルをそれぞれに投資した場合
スタンダードオイル 126万ドル
IBM 96万1000ドル
となり大きなリターンの差を生むことになる。なぜこんなことが起きるのか?
シーゲル教授はその答えはバリュエーションにあると結論づけている。
平均株価収益率はPERと呼ばれるもので、株価の割高割安を測る指標として主に用いられている。
スタンダード・オイルのPERはIBMのそれの2倍ほど割安である。
PER(株価収益率)=株価 / EPS(1株あたりの純利益)
一般的に同じ業界の企業であれば、PERが低いほど会社の利益に対して株価が割安、高いほど割高と判断できる。
配当利回りもスタンダード・オイルがIBMを3ポイント以上上回っているのがわかる。
配当を再投資することで保有株数を増やすことができるが、50年後の保有株数はスタンダード・オイルは15倍ほどになり、IBMは3倍ほどのになるという。それは両社のそれぞれの株価が影響している。成長産業にいるIBMに対して高い増益期待があった分高い株価となり、スタンダード・オイルに対してはそれほどの増益期待がなかった分低い株価に抑えられていた。
配当利回り=年間配当金/株価×100
配当利回りが高いということは、投資金額に対して多くの配当金を得ることができる。
ネガティブニュース等で株価が暴落している場合は配当利回りも高くなる。
まず私はこれらのデータに虚をつかれた。このデータだけでも十分面白いのだけれど、読み進めていくうちにどんどんシーゲル教授の説得力ある文章に圧倒されていくことになる。
指標 IBM Standard Oil of NJ 優位 平均株価収益率 26.76 12.97 Standard Oil of NJ 平均配当利回り 2.18% 5.19% Standard Oil of NJ IBMとスタンダード・オイルのバリュエーション指標の比較(1950年〜2003年の平均)
データ引用 株式投資の未来より
指標 IBM Standard Oil of NJ 優位 株価上昇率 11.41% 8.77% IBM
配当利回り 2.18% 5.19% Standard Oil of NJ トータルリターン 13.83% 14.42% Standard Oil of NJ IBMとスタンダード・オイルのリターンの源泉(1950年〜2003年)
データ引用 株式投資の未来より
創造的な破壊か、創造の破壊か?
こちらの章では、全世界の人々が愛してやまなしS&P500の指数で面白い試みをし、そちらもデータ化している。S&P500は1926年「総合株価指数」を組成した。私もこれを読むまで知らなかったのだけれど当初の採用銘柄は90銘柄のみだったようだ。1957年3月に500銘柄に拡大し「S&P500」が誕生する。
当初、採用銘柄の構成は固定されていて、製造業425、鉄道25、公益企業50と決まっていたようだ。1988年にこのセクター別配分を廃止し、常に市場を代表する構成を目指して「経済を主導する業界の主導的な企業」500社を採用する現在の姿となる。またスタンダード&プアーズが設定する基準を超える銘柄だけで構成されるため、現在に至るまでいくつもの新陳代謝が行われてきた。現在、S&P500は「情報技術」「通信」などが大半を占め、「エネルギー」セクターなどは肩身の狭い思いをしている。
ここでシーゲル教授は考えた。この当初から採用されていた銘柄だけでポートフォリオを組んだら現行のS&P500に勝てないか?、と。シーゲル教授は下記の3種のポートフォリオを組んでみる。
- 「生き残り」組
当初の構成銘柄のどれかが合併、上場廃止した場合、その銘柄を売却し、売却残り金を残った銘柄に再投資する。 - 「直系子孫」組
構成企業が合併してもそのまま保有し続ける。スピンオフした場合は分離された部分を売却し、売却代わり金を親会社に再投資する。 - 「子孫丸抱え」組
スピンオフされた部分も全て保有し続ける。1株たりとも売らずにバイ&ホールドする。
結果としては、上記全てのポートフォリオがS&P500の指数を上回るリターンを収めることになる。またリスクも抑えられるとの驚くべき結果となる。
シーゲル教授は、「S&P500の当初採用企業の運用成績は、平均すると、その後半世紀の間に採用された1,000社近い新興企業の成績を上回ったと」、結論づけている。これまたインデックス信者であった私の度肝を抜くデータとなった。
ポートフォリオ $1,000を投資した場合の現在価値 年率リターン リスク 生き残り $151,261 11.31% 15.72% 直系子孫 $153,799 11.35% 15.93% 子孫丸抱え $157,029 11.40% 16.08% S&P500 $124,522 10.85% 17.02% データ引用 株式投資の未来より
時に裏打ちされた価値 〜黄金銘柄を探して〜
黄金銘柄(コーポレート・エルドラド)は存在するのか?そんなものがあれば絶対に知りたい。こちらも先ほどのS&P500と比較をしている。
1957年S&P500のインデックスファンドを1,000ドル購入し、配当を全て再投資に回した場合2003年12月に約12万5000ドルになっている。ここである銘柄を同じタイミングで買って同様の運用をした場合、約460万ドルになった。その銘柄とはタバコ業界のアルトリア・グループである。
その原因として、タバコ業界には規制や訴訟リスクがつきものである。それらの問題が噴出した場合、株価は下がり、配当利回りが上がり、再投資で多くの株を購入できる。これを辛抱強く継続できた人は高いリターンを享受できるのである。
このことから次の投資原則が証明される。
肝心なのは、増益率そのものではなく、それが市場の期待に対してどうだったかにある。
株式投資の未来より
低い期待、高い成長率、高い配当利回りが噛み合って、リターンが加速する
株式投資の未来より
端的に言ってしまえば、投資家が期待する以上に成長する銘柄を見つけることさえできれば、それが「黄金銘柄」になる可能性があるということだ。それを知るための最適の指標は先ほどの株価収益率(PER)となる。また長期的なリターンは以下のように決まるとしている。これは今でも私の個別株投資の投資判断基準になっている。
株式の長期的なリターンは増益率そのものではなく、実際の増益率と投資家の期待との格差で決まる。
株式投資の未来より
成長すなわちリターンにあらず 〜成長セクターに潜む罠〜
投資家のための教訓
●セクター成長率の高さは、必ずしも高いリターンを意味しない。過去数10年間、金融とハイテクの両セクターは市場に占めるシェアを大幅に伸ばしたが、投資家にもたらしたリターンは市場平均並かそれ以下だった。逆に、エネルギー・セクターはシェアが劇的に縮小したが、リターンはS&P500種平均を上回った。
●エネルギーと情報技術の2セクターは20年相前後して、見分けがつかないほどよく似たバブルを経験している。双方とも、バブルがピークを迎えたとき、時価総額がS&P500全体の30%に達していた。
株式投資の未来より
シーゲル教授が割り出した、長期的な勝ち組の3セクターが、ヘルスケア、生活必需品、エネルギーである。
ヘルスケア
・ヘルスケア業界の平均リターンはS&P500主要セクター10種の中でトップ。
・ファイザー、ジョンソン&ジョンソン、メルクなどの老舗が多い
生活必需品
・それがなくては生活が成り立たない製品をいい、景気変動に左右されない。
・市場を世界に広げ、高い品質を守り、品質に寄せられる信頼を武器に事業を拡大してきた。
エネルギー
・石油を掘り、コストをギリギリまで抑えて、利益を配当の形で株主に還元した。
・株価が常に低く、低いバリュエーションと高い配当が噛み合って、リターン上昇に加速がついた。
私は2015年からこの考え方を肝に銘じ銘柄を購入してきた。私の公開しているポートフォリオをご覧いただければ一目瞭然である。しかしこの数十年は圧倒的に「GAFA」が強く、私のシーゲル流運用はナスダックにアンダーパフォームしている。全部、インデックスファンドにだけ投資していればもっとリターンがあったかもしれない。
しかし長期的視点では、この現在の状況は、上記の「投資家のための教訓」にあるバブルがピークを迎える状態、に近いのではないかと私はなんとなく感じている。私は今後とも愚直にこの投資方針を崩すことなく投資を続けて行く予定だ。私はこの投資手法が、近い将来のアウトパフォームすることを予感している。ただなんとなく。
セクター 市場シェア
(2003年)
市場シェア
(1957年)
市場シェアの 拡大
(縮小)実質
セクター・リターン当初銘柄の
リターン金融 20.64% 0.77% 19.87% 10.58% 12.44% 情報技術 17.74% 3.03% 14.71% 11.39% 11.42% ヘルスケア 13.31% 1.17% 12.14% 14.19% 15.01% 一般消費財 11.30% 14.58% -3.28% 11.09% 9.80% 生活必需品 10.98% 5.75% 5.23% 13.36% 14.43% 資本財 10.90% 12.03% -1.13% 10.22% 11.17% エネルギー 5.80% 21.57% -15.68% 13.32% 12.32% 電気通信 3.45% 7.45% -4.00% 9.63% 10.47% 素材 3.04% 26.10% -23.06% 8.18% 9.41% 公共事業 2.84% 7.56% -4.81% 9.52% 9.97% S&P500 100% 100% 0% 10.85% 11.40% 各セクターの市場シェアとリターン(1957年〜2003年)データ引用 株式投資の未来より




コメント