FIREブームと靴磨きの少年のあれこれ

マインド

ある日の出来事から感じたこと

あるFIREを志す後輩の女性と

先日、たまたま会った女性の同僚から「○○さん辞めるって聞いたんですけど。FIREってことですか?」と聞かれたので、私は少しの驚きながら「うん、そうだよ。」と答え、続けて「ところでFIREって言葉知ってるんだね?」と返した。こんな直接的に「FIRE」したのかと聞かれたのは初めてだったから正直面食らった。また、その女性は30代前半の女性で営業で数字を出すタイプだったので、ちょっとネガティブにもとれる「FIRE」って言葉とは無縁だと思っていた。

「そうですね。最近YouTubeとかテレビとかでも結構やってますよね。最近私もYouTubeとかで勉強していて、VTIとか買おうかな?とか思っているんです。」とのこと。確かにここ数年で、YouTubeやメディアでのFIREの話題が増えてきているのは実感としてあった。また私が投資を始めた頃は私の周りで投資の話をしている同僚もほぼいなかったため、株の話ができる同僚とは声をひそめてしていたものだ。この2〜3年で投資環境が劇的に変化してきたように思える。

「年を取ってからいろいろ楽しんでもしょうがないなって。最近そう考えるようになって・・」と彼女は悩みを打ち明けてくれた。その言葉に、私はインフルエンサーのコメント欄によく見る「思慮の浅い言葉」だなと、感じてしまった。彼、彼女たちのコメント欄は肯定と絶賛のコメントが判で押したようにならぶものだ。SNSとかに馴染みの薄かった私はなんか新しい新興宗教かなんかに見えてしょうがないのだけれど。YouTubeを見ていると本の知識を要約しただけのものなんかも見受けられる。ただそれをビジネスチャンスとして気づき動画として確立させたインフルエンサーたちには賞賛しかない。

古今東西流行の広まり方〜あるいはマーケティング〜

最近の流行なんかはSNSを中心にものすごいスピードと量で広がっていくのかと改めて実感している。私のように本を何百冊とハラ落ちするまで読み込む方法は古臭いと思われるに違いない。この流行の広がり方は、たとえば「spgアメックスカード」「Apple製品」「仮想通貨」の流行や「陸マイラー」の新規ルートの発掘なんかからも理解できる。みんなの欲望が同じ方向に凄まじい勢いで向かう様子は、昔のアメリカ映画なんかに出てくる「ゴールドラッシュ」を思い出させてくれる。ただ、かのピーター・リンチが言うように「ゴールドラッシュで儲けた者は、穴をほっていた者ではなく、テントやツルハシを売っていた者」だということは肝に銘じるべきことだ。またどうしても、この若年層の株式投資熱に「靴磨きの少年が株式投資の話をしたときは天井が近い」と言う格言も同時に脳裏に浮かんでくるのも付け加えておく。

古今東西 投資環境の変化

最近投資を始めた若年層と呼ばれる人たちの中には、いわゆるインフルエンサーたちの情報を丸ごと鵜呑みにして、ただの素人がそれほど深い理解もなく何となく投資を行っている人もいるように見える。ただインデックス投資とはそういった万人受けする性質のものだし、行動したものが将来的にその果実を受け取ることができるのでその流行自体は悪いことではないと考えてはいる。

ところで私が10年ほど前にインデックス投資をやっていた頃は、まだまだ黎明期で信託報酬の最安値とかでいえばSTAMシリーズで「0.5%」程度であった、買付時に「ノーロード」で購入できる投資信託自体も少なかった。また当時はコストを抑える方法として、積み立て投資である程度運用資産が貯まったら信託報酬の安いETF「VT」に乗り換える「リレー投資」とかいう知る人ぞ知る手法がもてはやされていた。そんな時代であった。今ではemaxis slimなんかのETFの信託報酬に迫ろうかとする商品も現れている。そうなるまでの過程の中で、「ニッセイシリーズ」,「たわらシリーズ」などの信託報酬の値下げ攻防があった。そういった時代、我々は最安の信託報酬に次々と飛びつき積み立て商品をかえコストを抑えるという血の滲むような努力をしてきた。その結果、今は猫も杓子も「emaxis slimシリーズ」一択でほぼ間違いがない時代が到来した。昔を知るものとしては、今から投資を始めようとしている若者たちがただただ羨ましい。そう、これはただの嫉妬だ。

10年前の私から10年後の後輩へ

その後輩は続ける。「だいたい毎月いくらくらい投資すればいいんですか?」、と。私は「それは人それぞれなんじゃないかな。もし早くFIREしたいなら入金力を高めるのが一番だよ。」と回答する。「そうですよね。今、複利の計算をしていてシュミレーションしているんですよね」と具体的な行動を伝えてきて思わず吹き出してしまった。というのも、ちょうど10年前の「セミリタイア」を志した私も同様のことを何度もくり返していたからだ。「元本」「毎月の積立額」「ボーナス入金額」「期待リターン」「積立期間」を組み替えて何度も何度も計算した。失礼とは承知の上、彼女の今の年齢を聞いたら「33歳」とのことだった。それは奇しくも私がインデックス投資を本格的に開始した年齢だった。私は冗談っぽく「毎月15万円、ボーナスの8割を積み立てできれば10年後にFIREできるんじゃない」とだけ伝えた。このことは言わなかったけれど、それは私が10年間愚直に実行した「ルール」だ。

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